愛西市立佐屋中学校
 

校長室から

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2025/03/07

第78回 卒業式

| by 佐屋中学校
令和6年度 卒業式 式辞
                                           
 厳しい寒さが続いたこの冬のなごりを感じながら、春の訪れを待っていた草花に、命の力強さを感じる季節となりました。
 この善き日に、佐屋中学校を巣立っていく186名の皆さん、「卒業おめでとうございます」
 
 皆さんにお渡しした卒業証書は、義務教育の全課程を修了した証であると同時に、皆さんを様々な面で支えてくださったご家族の方に対する感謝の証でもあります。
 どうか、お家に帰ったら、感謝の気持ちを自分の言葉で伝え、家族の皆さんに卒業証書を渡してください。

 保護者の皆様、お子様のご卒業、誠におめでとうございます。
 義務教育の9年間、そのなかには、語り尽くせない多くの喜びと、多くのご心配・ご苦労があったことと思います。今日のこの晴れ姿をご覧になり、感慨もひとしおのことと存じます。これまで3年間にわたり、本校の教育に対して、ご理解ご協力をいただき、お子様の成長のため、ともに力を合わせて進むことができましたことに、厚くお礼申し上げます。
 これから、新しい環境で、また様々な困難に出会い、迷ったりくじけそうになったりすることがあると思います。どうぞこれまで以上に、お子様を温かく見守り、支え、励ましていただきたいと思います。お子様が健やかにたくましく成長されますことをお祈り申し上げます。

 さて、卒業生の皆さん。皆さんと私の出会いは、皆さんが2年生になった時です。このわずか2年間に、皆さんの良いところをたくさん見せてもらいました。
 特に3年生になってからの皆さんは、佐屋中学校の最上級生として、自覚と責任をもった素晴らしい活動をして、立派な成果を上げてくれました。 
 普段の授業はもちろん、行事や部活動・委員会活動で、常にひたむきに頑張る姿、一生懸命な姿を見せてくれました。
 中でも印象的だったのは、学校祭です。文化祭でのブロック合唱が5年ぶりに復活したことで、体育祭・文化祭2日間を通して、総合優勝が決まる仕組みとなりました。
 そのため、これまで以上にブロックへの所属意識、そしてブロックごとに団結する意識が高まり、学校祭全体を通して、とても充実していたように感じました。
 そのすべてを最高学年として引っ張り、盛り上げてくれたのが3年生の皆さんでした。気が遠くなるような暑さの中で、下級生を励まし、指導しながら各種競技の練習に取り組む皆さんの一生懸命な姿は、本当に素晴らしかったと思います。
 また、ブロック合唱では、5年間の空白によって、全体で歌うこと自体経験がなく、ましてや合唱を完成させていくノウハウも失われていた中で、手探りでリーダー的立場として下級生を指導し、引っ張る頼もしい姿を見せてくれました。おかげで、課題曲、自由曲とも、どのブロックも本当に完成度が高く、3年生の皆さんをはじめとして、佐屋中生全体としての達成感、そして各々の自信・成長につながったと思います。皆さんが見せてくれた自ら率先して行動し、ブロック全体を引っ張って目標に向かう姿勢は、佐屋中学校の新しい伝統として、下級生に引き継がれていくと確信しています。

 明るくたくましく成長した皆さんは、この佐屋中学校の大きな喜びであり、誇りです。今、新たな決意をもって上級学校へ進学する皆さんに、最後のお話をさせてください。

 皆さんは、修学旅行で東北地方を訪れ、東日本大震災を通して、防災について多くのことを学んできました。
 現地での皆さんの礼儀正しい振舞、きまりや時間を守り進んで行動できる姿、熱心に聞き入りメモを取る姿などについて、教育委員会の方々や現地でのガイドボランティアの方々はじめ、多くの皆様から称賛の声をいただきました。
 2日目に訪れた「3・11みらいサポート」では、震災の犠牲となった愛梨ちゃんのお母さん、佐藤美香さんの話を聞くことができました。聞いているだけで自然に涙が出てくるような生々しい話を、また、話しているお母さん自身が思い出して辛くなるであろう話を、皆さんに向けて、丁寧に語ってくれました。伝承交流施設では、愛梨ちゃんの遺品である幼稚園で履いていた上靴やクレヨンなどの展示を見せてくださいました。
 佐藤さんは、「娘の遺品が石巻を訪れた人たちに訴えかける力があるのではないか。」「皆さんがどのように見て、心に留めて、今後の防災の在り方について考えてくれるか、そのきっかけになれば良いなと思っている。」とおっしゃっていました。佐藤さんに限らず、現地のガイドボランティアの方々は、震災の伝承を通して、皆さん一人ひとりが災害を自分ごととして捉えられるような意識の向上を願いながら懸命に語りかけてくれていました。その思いは皆さんの心に届いたでしょうか。
 修学旅行からわずか1か月半後、夏季休業中に南海トラフ地震臨時情報が発表されました。この地域でも、いよいよ大きな震災への備えを必要としてきていると感じます。
 今後、上級学校へ進んでも、またやがて社会人になってからも、この修学旅行で学んだ「命をつなぐ」ための貴重な経験・学びを忘れることなく、周囲に広げながら生きていってほしいと願っています。
 愛梨ちゃんの最後の場所に咲いた花を、全国各地で育てることで、震災の風化を防ぎ、命の大切さを世界に伝えるのがアイリンブルー・プロジェクトです。佐屋中学校の来賓玄関前の花壇でも、5月頃からきれいな花を咲かせることでしょう。その頃には、皆さんは新しい環境に慣れ、新しい人間関係を築き、前向きに生活しているはずです。
 愛梨ちゃんの「生きたかった」そして「世界に愛の花を広めてほしい」という天国からのメッセージを強く受け止め、命の尊さを伝え続け、自らの命、周囲の人々の命を大切に生きていくことが私たちの使命です。

 佐屋中学校を巣立つ皆さん、4月からぜひ胸を張り、自信をもって、力強く一歩を踏み出してください。そして、新しい出会いを大切にして、充実した上級学校での生活を送ってください。
 名残は尽きませんが、皆さんの輝ける未来に、幸多からんことを心からお祈りして、式辞といたします。

 令和7年3月7日
 愛西市立佐屋中学校長   吉 次 章 浩
                                         

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